偽をもって忠とす
- 商品コード
- 2000000059174
- 商品名
- 偽をもって忠とす
- サークル
- 鏡花風月
【作家】和紀
【発行日】2010/08/14
【サイズ】A5判
ナズーリンが抱えた秘密と恋心に寅丸が右往左往、
焦る寅丸が無理やり秘密を聞き出そうとして……
彼女は常日頃から沈着冷静で、鼠たちへの指示を見れば、主としての器は彼女の方があるのではないか、と半ば目標としているのだけど。
そんなナズーリンがたった一言で慌てている。
「ナズーリン、ひとつ聞いてもよいですか」
鞄のことは置いておくのがいいだろう。
でもこれだけは知っておきたかった。
「な、なにかなご主人様」
咳払いをするナズーリン。
私は深呼吸をひとつとって、聞いた。
「どこへ行くのです?」
酷く抽象的な疑問だ。
何かを探索に行くというのだから、それが何処にあるかなんてわからないはず。
それでもある程度の検討はついているだろうし、なによりも彼女の探索は今日に限ったことではない。
「ど、どこだっていいじゃないか。も、もう時間だ。私は行くから、それじゃっ」
「ナズーリン?」
慌てて彼女は出掛けていった。
何か拙いことを聞いただろうか。
思い返すものの、鞄が変わっているだとか、どこへ行くのか、なんて取るに足らないことだ。
「……ナズーリン?」
ずっと傍にいた忠臣がひどく遠い場所にいってしまったような、そんな想いに胸がざわついた。
聖救出が叶い、皆が命蓮寺で時を過ごせるようになってはや数ヶ月。
彼女は三日に一度はああして出掛けて行ってしまう。
何かを探しているのだろうか。
それにしては三日に一度というのが解せない。
彼女の体力から言えば、三日三晩探索をし続けても平気だと言い張るだろう。現に聖救出の際にはそうして飛宝を探し続けていた。
私が止めていなければ倒れるまで、いや、倒れても探し続けたことだろう。
なにより彼女は毎回ほぼ手ぶらで帰ってくる。
探索に行って帰って来たのに手ぶら。
彼女の服に入る程度の小さなアイテムなのかもしれないけれど、それにしたって不思議な話だ。
考えれば考えるほどわからなくなる。
素直に彼女に聞こうにも、先のように慌てて出掛けていってしまう。
「ナズーリン……」
サンプル画像
【発行日】2010/08/14
【サイズ】A5判
ナズーリンが抱えた秘密と恋心に寅丸が右往左往、
焦る寅丸が無理やり秘密を聞き出そうとして……
彼女は常日頃から沈着冷静で、鼠たちへの指示を見れば、主としての器は彼女の方があるのではないか、と半ば目標としているのだけど。
そんなナズーリンがたった一言で慌てている。
「ナズーリン、ひとつ聞いてもよいですか」
鞄のことは置いておくのがいいだろう。
でもこれだけは知っておきたかった。
「な、なにかなご主人様」
咳払いをするナズーリン。
私は深呼吸をひとつとって、聞いた。
「どこへ行くのです?」
酷く抽象的な疑問だ。
何かを探索に行くというのだから、それが何処にあるかなんてわからないはず。
それでもある程度の検討はついているだろうし、なによりも彼女の探索は今日に限ったことではない。
「ど、どこだっていいじゃないか。も、もう時間だ。私は行くから、それじゃっ」
「ナズーリン?」
慌てて彼女は出掛けていった。
何か拙いことを聞いただろうか。
思い返すものの、鞄が変わっているだとか、どこへ行くのか、なんて取るに足らないことだ。
「……ナズーリン?」
ずっと傍にいた忠臣がひどく遠い場所にいってしまったような、そんな想いに胸がざわついた。
聖救出が叶い、皆が命蓮寺で時を過ごせるようになってはや数ヶ月。
彼女は三日に一度はああして出掛けて行ってしまう。
何かを探しているのだろうか。
それにしては三日に一度というのが解せない。
彼女の体力から言えば、三日三晩探索をし続けても平気だと言い張るだろう。現に聖救出の際にはそうして飛宝を探し続けていた。
私が止めていなければ倒れるまで、いや、倒れても探し続けたことだろう。
なにより彼女は毎回ほぼ手ぶらで帰ってくる。
探索に行って帰って来たのに手ぶら。
彼女の服に入る程度の小さなアイテムなのかもしれないけれど、それにしたって不思議な話だ。
考えれば考えるほどわからなくなる。
素直に彼女に聞こうにも、先のように慌てて出掛けていってしまう。
「ナズーリン……」